『田園の詩』NO.47 「絶妙のタイミング」(1996.6.11)


 街に住む知人に掘りたての筍を届けたら、「ちょうど庭の山椒の芽が良い具合に出て
いるので≪木の芽あえ≫ができます。家族皆が大好物なので…」と奥さんが大変喜んで
くれました。

 筍の取れる時期に山椒がほどよく伸びます。どちらが早くても遅くてもダメなのです。
双方が旬の時期に、絶妙のタイミングがピッタリ合った時、絶品ともいえる≪木の芽あえ≫
を作ることができます。

 この春は、筍が少し遅れたのが幸いして、タイミングがピッタリ合いました。ですから、
我が家も極上の≪木の芽あえ≫をたっぷりと味わうことができました。

 来訪した友人に、筍の先の柔らかい部分を刻んで≪木の芽あえ≫を出したら、「ボクは、
根っこの固い部分の方が好き」といいます。それではと、大きな筍を丸ごと全部使ってつ
くり、好きなだけたっぷり食べてもらいました。こうして、日を変えてやって来る友人と
毎日のように食べ続けました。


      
      これは、花山椒で昆布の佃煮(チリメン入り)を作っているところです。私がこの時点で
       味見します。少ししか作ることができない絶品です。  (08.4.22写)



 さて、私達は、食べ物に限らず生活全般において、自然と絶妙なタイミングの合致を
させながら暮しています。ピッタリと調子良く行くことの方が多いのですが、時に外れる
場合もあります。その度に一喜一憂しなければなりません。

 特に、農業は自然が相手だけに、タイミングを合わせることに気を使います。この時期、
近隣の人々の一番の気掛かりは、いつ田植えができるかということです。

 苗は、水道の水を充分やるのでスクスク育っています。しかし、五月晴れが続き一向に
雨が降らないのです。池からの水路がない田圃は、天水に頼る外はないのですが、まだ
田圃に水を引けません。

 このまま雨が降らねば…、農家の心労は募るばかりです。私が畑の水やりの心配を
する比ではありません。

 五月も末になり、ようやく曇り空になってきました。九州南岸まで梅雨前線が北上して
きたようです。どうやら、自然の方からタイミングを合わせてくれそうです。
                                (住職・筆工)

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